『ダルちゃん』が何故刺さる
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なぜ刺さるも何も、ダルちゃんは私です。
必死に人間のふりをしている女の子が、ここにもいたのかと、そう思いましたよね。
少しでも普通を踏み外すと人間扱いされないこの社会で、必死に擬態している女の子、それがダルちゃんで、私です。
こう振る舞えばどういう反応が来る、といちいち予測しながら送る日常は端的に言って地獄です。
異星人の中に紛れ込んだような日常を、あなたは想像できるでしょうか?
変だ、変わっていると言われ続けても飄々と、ひらひらと躱しているようなそぶりで、本当は何一つ受け流せないまま小さな傷が増えてゆく一方です。
だって多分、入ってるOSが違うんだもの。
それでも食い扶持を稼ぐためには働かねばなりません。
生きて、呼吸をして、社会性を保っているかのように振舞って、人間に擬態し、誰にも仇為さずに生きているだけで褒めて欲しいものです。
それが私の本音です。いいえ、私たち『ダルちゃん』達の本音でしょう。
あなたたちの『普通』は、私にとっての『普通』ではありませんでした。
社会生活を送るうえで支障のない程度に化粧をし、髪を染め、装いを整えてはいますが、それを心から楽しいなんて思ったことはありません。
全て義務のようにこなしています。
それらはすべて、
「私は、あなたたちの所属する集団の一員です。同じような見た目ですから、似たような考え方をしていますし、あなた方を否定しません。ほら、敵ではないでしょう?」
と、証をたてるため、擬態のための手段にすぎません。
なんだかますます、異星人めいてきましたが。
もちろん、「そこまで面倒でつらく、楽しくないのであれば努力を放棄して集団から外れてもいいのでは?」と思う向きもおありでしょう。
ただ、そう思うあなた方は多分、ご存知ない。
ある程度小綺麗にしていないと、女性が、集団から、周囲から、どんな仕打ちを受けるのか。
たとえ、小綺麗にしたくともできない理由が、
病気による極度のむくみ、肥満、肌荒れ等の不可抗力だったとしても、
周囲は、特に男性の反応は冷酷です。
(※私にはそんな経験はありませんので、あまり知ったようなことは言えませんが、友人は長年それによって苦しめられていました。)
(※もちろん、場所によっては、人間が出来ている人の集まりであれば、そのようなことも減るのでしょう。けれど外出した時に、カフェに入った時に、外の世界に触れた時に、通り魔的に辛くあたられる可能性は常につきまといます。逃げられないのです。)
その場所ごとに異なる「常識的な見た目」についてのコンセンサスを読み解き、そこから大きく外れないようにすること。さらに別の場所に移っても、ある程度、「常識的だ」と思ってもらえる装いをすること。
それは、かんたんにこなせる人もいれば、血の滲むような努力が必要な人もいると、私はそう思います。
とびきりの美人になりたいわけではない。ただ、人間扱いされたい、過剰な攻撃を受けることは避けたい、それだけです。
かつて『ダルちゃん』だったあなたにも、現在進行形でそうであるあなたにも、全く理解できないというあなたにも。
『普通』のスコープが狭すぎる社会は誰にとっても生きにくいはずです。
ほんの少しでいいので、異質(に思えるもの)への許容範囲を広げませんか?
もっとフラットに、ニュートラルに、誰もがどんな容姿であっても、どのようなふるまいをしても、他者に危害を加えない限り、鷹揚に許容されれば、と。
今もって『ダルちゃん』である私からささやかな願いです。
まあ、ささやかな願いなんてものは大抵踏みにじられますし、本当に叶って欲しいものも欲しいものも手に入らないのが常道ってものです。
少し、『ダルちゃん』本編からは外れた話になってしまった感もありますが……。
必死に擬態したところで、やはり集団からは外れてしまい、変だ、変わっていると言われ続けて生きてきました。
あらゆる本を、音楽を、好物を痛み止めにしながらどうにか生きてきましたし、
実は開き直って「外れて」しまうと結構自由だったりもするのですが。
(※先ほどまで申し上げてきたこととは矛盾するようですが、変わった人だ、と思われることで手に入る自由もあります。)
(※ただし、最低限、その集団に帰属しているのだという証を、ほんの切れっ端程度でも取り入れ、「敵ではない」と証明し続けることは必要です。過剰に排除されないためにも。)